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これはカイユボットの日本における《再々発見元年》と位置付けていいと思う!(ブリヂストン美術館「ピアノを弾く若い男」)

bridgestone.jpg

この度、ブリヂストン美術館さんにご丁寧にメールをいただきまして、
「あなたに見せたい絵があります。−ブリヂストン美術館開館60周年記念−」
の内覧会にお邪魔して参りました。

私の目的はもちろんコレ、


ブリヂストン美術館が新しく所蔵した「ピアノを弾く若い男」です!
日本の美術館では初めて※カイユボットの「前期」の作品を「常設」したのですから
Caillebotte.netとしては喜び勇んでお伺いするしかありません。

※初期でない作品では東京富士美術館の「トゥルーヴィルのヴィラ」があります。
あと、古い情報ですがAska International Ltd.,が2作品持っているとかいないとか?(未確認)




一応、カイユボットについておさらいしますと
————————————-
・印象派の画家たちを経済的、精神的に支えた
・印象派展の開催に尽力した
・死後にコレクションしていた印象派の作品を国に遺贈し、現在のオルセー美術館の重要な核となった
・自身も印象派展に出展するなど画家としても活動していた。
・代表作は《床の鉋かけ》《ヨーロッパ橋》《パリの通り、雨》など

・経済的に恵まれていたため絵を売る必要が無く、また早くに無くなったため、その存在はあまりメジャーではない。
————————————-


この作品は1876年にカイユボットが初めて参加した第二回印象派にも展示されたもので、
音楽家でもあったカイユボットの一番下の弟マルシャルがモデルをつとめています。

この「ピアノを弾く若い男」は、「印象派」と私たちが聞いて頭にまず浮かぶような
大胆な筆致で描かれたものとはことなり
むしろアカデミックな作品のように丁寧な筆致で描かれています。
ですから「印象派??」と思われるかもしれませんが近代生活の都市風景を描いた様子やカーテンから差し込む柔らかな光の様子を捉えているところはやはり印象派の作品だと言ってしかるべきでしょう。


81×116cmという少し大き目の作品で細部までしっかり見ることができます。
私的に是非見て欲しいところを挙げますので参考にしてください(●ゝω・)

もちろん、以下に関わらず好きに感じていただければOK。
Don’t think but feel ですよ!

————————————-
《光の様子》
カーテンから差し込む光の行方を是非追ってください。
左手の大きな窓からレースのカーテンを通って差し込む光。
左下の床は明るく照らし、ピアノの下の床は暗くなっています。

《ピアノへの映り込み》
またその光がピアノにマルシャルのピアノを弾く指や鍵盤、壁のモールや模様を映し込ませています。
この映り込みは画集などではあまり感じなかったのですが、
実際に見てみると実にキリッとしていて、この作品によいアクセントと緊張感を与えていると思います。

《ピアノ》
このピアノはかつてフランスを代表した、エラールのピアノだそうです。
今一般によくみるグランドピアノとは違ってピアノの先のところが丸くありません。
(エラールのピアノが全部が全部丸くない訳ではないと思いますが)
もしもここが丸かったら、この作品から受ける印象はもう少し違うものになっていたかもしれませんね。

またこのピアノは発表当時「デッサンがおかしいのでは?」と言われたそうです。
確かにこの作品の前に立つと、全体的に短縮方気味なのか
なにかしらの違和感を感じます。
特に、真正面からではなくて、ぐっと斜めから見るとすごく不思議な感じがしました。

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▲右から左からお試しください。

これこそ実際に作品を見てみないと分かりません。
是非お試しあれ!

《マルシャルとピアノ》
マルシャルの目線。画集に載っている画像ではさっぱり分かりませんでしたが
このマルシャルは確実に譜面を見ています。
そしてピアノを弾いています。
それを感じると、この作品がぐっと身近に感じられることでしょう。

譜面にも音符がきちんと見えました。
私は音楽に疎いのであれですが、お詳しい方、よく見てみてください♪
(そして私にどんな感じの曲なのか教えてくださいmm)

《壁や絨毯の模様》
当時お金持ちだったカイユボット家の裕福そうな壁紙や絨毯の模様がしっかりと描き込まれているところ。
レースのカーテンの模様まで描かれていますので、こちらにも注目です。

《材質の違い》
レースのカーテン、椅子のベロア・レースの柔らかな材質とピアノの堅い材質の対比がおもしろいです。
また隣のビルディングがカーテンから透けて見える様子も見てください。

《構図》
こんな室内の作品でもカイユボットの好きな「遠近法の構図」が感じられます。
縦の線として窓、カーテン、壁のモール、壁の絵、ピアノの脚など
斜めの線として、窓、バルコニー、床、ピアノ

《サイン》
作品の右下にサインがあります。
絨毯の模様にまぎれてわかりづらいですが、これもよく見て探してください!
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嗚呼!こうして書いているだけでテンションが上がってくる私です!

実はこのサイトは「カイユボットをパトロンとしてだけではなく一人の画家として評価していこう」というコンセプトに基づいているのですが、
カイユボットの作品が日本に常設されたということは
今後これを見た方に、「画家」として知ってもらう/評価してもらう
よいきっかけになるだろうと期待しています。

つまり、今年は日本におけるカイユボット「再々発見元年」といっていいと思います!

今後が楽しみになってきました^o^

※再発見は1970年代です。



最後にブリヂストン美術館さんの宣伝を

anatani.jpgあなたに見せたい絵があります。-ブリヂストン美術館開館60周年記念
2012年3月31日(土)〜2012年6月24日(日)

学芸員の方たちの、純粋に「これら絵を見てもらいたい!」という珠玉の109作品が展示されています。
ここはカイユボットブログと言うことでその他の作品については触れませんが
その他の作品も見応えのある作品でした。

約三ヶ月という長い会期に加え、休館日は4/15(日) 4/23(月) 5/28(月)のたったの三日間!
この展覧会にかける思いが伝わりますね。

東京駅からもすごく近いので、旅行の空いた時間に行くことだってできますよ!


また、今回の展覧会の図録にも約8ページにわたって
「ピアノを弾く若い男」の解説文が載っています。
カイユボット単体の解説文は日本では数少ないですから、これも是非とも読んでください!

ピアノを弾く若い男」サイト解説文



あー、とにかくこの記事を読んだ人はみんな行って!!!

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