最新の記事
ブリヂストン美術館がカイユボットの《イエールの平原》を新所蔵&展示
2015-02-21ランダム表示
//php wp_list_cats('exclude=1,2,6,5,12,3,25,11,21,20,16,23,22,14,19,8,10,7,17,18,9,24,15,13,4'); ?>
「化粧台の前の女」
今まであまり深く考えず、この女性は単に「スカートを着よう(または脱ごう)としているところ」なんだと思っていましたが、
そうではなくて「クリノリンを付けている(または外している)ところ」なのだそうです。
※本にクリノリンと書いてあったけど正確にはその一種であるバッスルなのかも。(2010/08/08追記)
クリノリンとは女性のスカートをふくらませるための道具でした。
この作品が描かれた頃のクリノリンはかつてほど全体にふくらませず
腰の後ろを盛り上げるタイプのものになっていたようです。
クリノリン、バッスル(Wikipedia)
カイユボットが描いた他の作品の女性たちを見てみましょう。
彼女たちもこれを付けているのでしょうか?
いずれにしてもこの時代は腰の後ろが盛り上がっている形のスカートが主流だったのですね。
左から
「室内、窓辺の女性」1880年
「坂道」1880年頃
「バラ園、プティ=ジャンヌヴィリエの庭」1886年頃
カイユボットは何枚か、川に飛び込もうとする男の絵を描いています。
水浴者、イエールのほとり
「川」で泳いでいるように、この時代、プールはほとんどなかったため、川や湖で泳ぐのが普通でした。岸辺にはこの作品のように飛び込み板が設置されていることもありました。
水泳はレジャーでもあり、体を鍛えるため軍事学校でも奨励されていたのです。
そして、プールもなくてどうやって練習していたかというと、まず陸地で。
椅子のようなものに腹ばいになって手足を動かす練習からスタートです。
想像すると、ちょっとおかしいですね^▽^
飛び込む男の格好がぎこちないのもその為かもしれません。
さて、この人達が着ているのは19世紀のファッショナブルな水着。
おそろいの水着なので、どこかの訓練なのかな?
女性は公共の場では泳ぐことはあまりありませんでした。
カイユボットはセーリングやカヌーなど男性的な主題を描くことが多かったのですが、
この水泳の場面からもその一面が垣間見られますね (●ゝω・)
左から「イエール、飛び込み台の男」「 遊泳者、イエールの川岸」
「名画とファッション」という本を読んでいたら(小学館・深井晃子著)「ヨーロッパ橋」のファッションについて書かれていました。
それによると、欄干にほおづえをついている男はタブリエと呼ばれる作業着を着用。
カイユボット自身がモデルだと言われるシルクハットの男はルダンゴト(フロックコート)を、傘を差した女性はハイネックのアフタヌーンドレスと黒の手袋をしている。女性が昼間に肌を見せるのはこの時代のエチケット違反なのだそうだ。
なるほど、このタブリエは他にも「ハウスペインター」の中でも確認することが出来ます。
現在タブリエはエプロンのような前掛けの意味で使われているようなのですが、
これら作品の中のタブリエはどちらかというとスモックに近そうですね。
ヨーロッパ橋の左側の男女の服装は、この時代の一般的なファッションだったのでしょう。
「パリの通り、雨」の男女も近いファッションをしています。
男性はダブルのフロックコートを着て(「パリの通り、雨」はダブルかどうかかわかりませんが)、女性はベールのついた帽子をかぶっています。
この当時女性は午後のちょっとした用事にも帽子をかぶることと決められていたようで、
その決まりに従って彼女たちはおしゃれな帽子をかぶっています。
コートというからには寒い時期なのかと思いましたが、フロックコートは結婚式で男性が着ることのある礼装と同じようなものですので、厚さ的には背広くらい。
この絵が描かれた時期は夏でもなく冬でもない時期といえそうです。
「パリの通り、雨」の方は奥に長めのコートを着ている人もおり、雨ということで「ヨーロッパ橋」の方よりも気温は低そうですね。