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チューブ入り絵の具の登場によって描くことができた鮮やかな色彩 「ジェンヌヴィリエの平野、黄色い野原」


1884 年 カンヴァスに油彩 54.5×65.4cm
作品概要はこちら

展覧会に展示されていた色材の発展チャート(下画像)によると、
1870年頃になって、飛躍的に色数が増えていきました。
チューブ入り絵の具が開発されたり、戸外製作用の様々な道具が開発されたり、平筆がでてくるなど、19世紀になって画家の使うための道具は非常に発展していったのだそうです。

color.png

そうなると、まぁこの作品に限らずですけど
下塗りの平筆と、塗ったというよりは「置かれた」といったほうがいいかもしれない大胆な筆致、
平原の鮮やかなグリーンとイエロー、そしてオレンジ色、
これらは19世紀でないと描けなかった作品かもしれないですね。

1870年代になって数が増えただけでなく、
かつては高価だった青色などももっと安価に、簡単に手に入るようにになったのでしょうね。

カイユボットのすてきな青みがかった色だって、この時代でなければ描かれなかったのかもなぁヘ(´ω`)ゞ

もっと古い時代から絵の具や画材が発展していたら
絵画の流れもまた違ったものになっていたかも。
そして、絵の具も少なく、持ちも悪く、少ない種類の筆で描いていた
ずっと昔の画家たちにも感心しちゃいますね。

 +  +  +

さて、この作品は、空の面、遠景の木々の面、緑の面、黄色の面、オレンジの面、と
いくつかのエリアに簡単に分割することができます。

セザンヌは自然を「筒、球、円錐」として捉えて絵を描いていましたが、
カイユボットも遠近法だけでなく、このように「自然を幾何学的な形に捉える」のがきっと好きだったのでしょう。

それは彼の代表作「パリの通り、雨」から一貫してカイユボットの中に根付いているものだと思います。

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【図録解説】
19世紀を通して、絵の具の種類は劇的に増加した。18世紀以降の近代科学における化学や鉱物学の進展により新たな元素や化学反応が発見された結果、それまで一部の非常に高価な材料を除けば存在しなかった鮮やかな色を持つ絵の具を、街の画材みせで手に入れられるようになったのである。そして、19世紀半ばには絵の具用のチューブが開発され、画家たちは初めて、絵の具をいつでもどこでも、すぐ使用できる状態で手元に常備しておくことが可能になった。
このような新しい絵の具の登場によって、カイユボットは1880年代び初めにパリから生活の中心を移したジェンヌヴィリエの風景を、目の覚めるような鮮やかな色彩で描くことができたのである。
また、作品のカンヴァスの寸法は、当時から既製品として流通し、現在でも使用されている規格サイズのF15に相当する。カイユボットはこのF15サイズが気に入っていたらしく、《セーヌ川の支流、秋の気配》《アルジャントゥイユのレガッタ》でも使用している。この規格サイズを示す「F15」の「F」はフランス語の”figure”の頭文字で、人物画(figure)用、という意味合いを持っている。カンヴァスの規格サイズには他に風景画(paysage)用の「P」、海景画(marine)用の「M」がある。しかし、カイユボットがF15によく風景画を描いているように、印象派の画家たちは支持体のサイズを選ぶにあたって、このような主題による寸法の基準には、ほとんど関心がなかったようである。

「光を描く印象派展−美術館が解いた謎−」展覧会図録P66より
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以下は「公式の調査報告サイト」を翻訳したものです。
(間違いがありましたらどうぞご指摘くださいmm)
詳細図はここに載せていませんのでリンク先をご確認ください。

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カイユボットは標準的なF15サイズ (54.0 x 65.0 cm) のカンヴァスを好んで使用しており、この「ジェンヌヴィリエの平野、黄色い野原」もそうである。
全部で500以上からなる作品のうち、100作品以上はこのサイズのカンヴァスを選んでいるのだ。[Lewerentz 2008, pp. 274-275]

あらかじめオフホワイトで下塗りされたカンヴァスは画材屋デビュのもので、カイユボットはその画材屋をよく利用していた。[参照: Caillebotte WRM Dep. 828, WRM Dep. FC 727, WRM Dep. FC 689, WRM Dep. 622]
裏張りがなされているが、紫外線撮影によってここでカンヴァス裏の画材屋のステンシルの銘を明らかにすることができる。(図6)

カイユボットの他の作品でよりはっきり確認することができるように、この作品でも木炭とブラシペイントの2段階の地塗りがされた証拠がみつかった。
[参照: Caillebotte WRM Dep. 828, WRM Dep. FC 706, WRM Dep. 447, WRM Dep. 622] (図12)
その後、その作品はウェット-イン-ウェットだけでなくウェット-オン-ドライの技法で、主に短いストロークとはたいたような快活な筆致で描かれた。
作品の表面は2,3の工程で繰り返し塗られ、徐々に覆われていき、作品前面はますます厚塗りになった。
ダークグリーンで描かれたサインと制作年は最後のカラーハイライトと同じ色で同時に描かれたようにみえる。(図7)
この作品が戸外で描かれたという重要な証拠が、作品下端に確認できる。残念なことに修正されているが、当時よく戸外で使用される種類のイーゼルで固定されていた、絵の具が塗られていない小さな部分である。
[vgl. Caillebotte WRM Dep. 622, WRM Dep. FC 828, WRM Dep. FC 727, WRM Dep. FC 689](図10)

詳細図2:裏打ちされている作品裏面
詳細図3:斜光をあてた様子
詳細図4:透過光線写真
詳細図5:紫外線写真
詳細図6:裏面紫外線写真。画材屋デュビュのステンシルがうっすら認識できる。
詳細図7:サイン詳細
詳細図8:生き生きとした絵筆。下の白地が適当に残ったままだ。
詳細図9:ウェット・イン・ウェットやウェット・オン・ドライで描かれた花畑部分詳細。
詳細図10:作品下部詳細。入射光線と顕微鏡でみたリタッチされた箇所。(1目盛=1mm)それは屋外用イーゼルで固定されていたためにできたのであろう。
詳細図11:顕微鏡で見る、黄色から赤茶色のわずかな混合物があるオフホワイトの下地。(1目盛=1mm)
詳細図12:顕微鏡で見る青灰色の下塗りと事前に描いた木炭のスケッチと思われるものの跡。(1目盛=1mm)


Caillebotte had a particular predilection for pictures in the standard Figure 15 (54.0 x 65.0 cm) format, and this painting Gennevilliers Plain, Yellow Fields, is one such. He chose this format for more than a hundred pictures out of a total output comprising more than 500 works [Lewerentz 2008, pp. 274-275]. The canvas, pre-primed in off-white, came from the art-supply dealer Dubus, whom Caillebotte frequently patronized [cf. Caillebotte WRM Dep. 828, WRM Dep. FC 727, WRM Dep. FC 689, WRM Dep. 622]. In spite of the canvas’s being lined, it was possible here to use UV fluorescence to reveal the dealer’s stencilled inscription on the canvas verso (fig. 6). As has been possible to establish far more clearly in Caillebotte’s other pictures, this one too shows evidence of a two-stage underdrawing in charcoal and in brush-and-paint. [cf. Caillebotte WRM Dep. 828, WRM Dep. FC 706, WRM Dep. 447, WRM Dep. 622] (fig. 12). The actual painting was then executed with lively brushwork predominantly in short strokes and dabs, wet-in-wet, but also wet-on-dry. The surface of the picture was gradually covered in repeated applications of paint spread over two to three sessions, during which process the foreground became increasingly impasto (figs. 3, 4). The autograph signature and date in dark-green paint seem to have been applied at the same time as the final colour highlights and in an identical colour (fig. 7). An important pointer to the picture’s having been painted in the open air is to be found on its bottom edge, where a (now unfortunately retouched) unpainted patch points to the painting’s having been fastened to a field-easel of the sort then usual for plein air painting [vgl. Caillebotte WRM Dep. 622, WRM Dep. FC 828, WRM Dep. FC 727, WRM Dep. FC 689] (fig. 10).

Fig. 2:Verso, lined
Fig. 3:Raking light
Fig. 4:Transmitted light
Fig. 5:UV fluorescence
Fig. 6:UV fluorescence of verso with detail of the sketchily discernible dealer’s stencil “DUBUS”
Fig. 7:Detail, signature
Fig. 8:Detail, brisk painting method with places where the white ground has been left free
Fig. 9:Detail, flower field, with wet-in-wet and wet-on-dry paint applications
Fig. 10:Detail of the bottom edge of the picture, retouched unpainted patch in incident light and beneath the microscopic photograph (M = 1 mm), which presumably derives from the picture’s having been fastened to a field-easel
Fig. 11:Off-white ground with slight admixture of yellow to red-ochre pigment, microscopic photograph (M = 1 mm)
Fig. 12:Blue-grey brush underdrawing and remains of what appears to be a previous charcoal sketch, microscopic photograph (M = 1 mm)

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