1881/1/24付けの手紙
1881/1/24、第六回印象派展の開催前にピサロに宛てて送った長文の手紙です。
カイユボットは印象派展の運営を巡ってはしばしばドガと対立していました。特にドガが引き連れてきたラファエリは、彼の目にはむしろアカデミックに写ったようです。
しかしずいぶんドガのことをたたいていますね(-▼-;)
書いているうちにヒートアップしてしまったのかもしれません・・・。
けど、この手紙を受け取ったピサロは逆にドガの肩を持ちました。
この長ったらしい手紙が原因だったりしてw。カイユボットうざ!とか思って。
私たちの展覧会はどうなるのでしょう?これは私が熟考した上での見解です。展覧会は続けるべきですが、芸術的な目的のうちにのみ続けるべきだと思います。それこそ私たち全員が興味ある唯一、絶対の目的です。ですから、展覧会はこの趣旨に本当に利益をもたらす人々、すなわち、あなたとモネ、ルノワール、シスレー、モリゾ夫人、カサット嬢、セザンヌ、ギヨーマンで構成したいと思います。もしあなたがよろしければ、ゴーガン、そしておそらくコルデーと私自身を加えたいと思いますが、これで全員です。というのも、ドガはこうした基準では拒否するでしょうから。私はむしろ、人々が私たちの個人的ないい争いの何に興味を持っているのか知りたいです。これらのことでつまらない喧嘩をするのはとても浅はかだと思います。ドガが不和を持ち込んだのです。あんな風に欠陥のある性格の持ち主だなんて、彼自身不幸でしょう。ドガは、ラ・ヌーヴェル・アテーヌや社交界で熱弁をふるい時を過ごしているみたいですが、そんな時間があったら少しでももっとましな絵が描けるようにした方がいいでしょう。彼が話すことには百も理があり絵についてすばらしい機知と感覚で話すのはたしかです(これは彼が有名になった本当のところではないでしょうか)。しかしながら、画家が評価される上での本当の論拠は作品にあるわけで、その話にたとえ千の理があるとしても、それでもなお、作品の方により真実を見出すことができるはずです。ドガは、今では実際的な必要性を説き、ルノワールとモネを許しません。でも、彼は経済的な破綻をする以前は、今とはまったく違っていたと思いませんか?彼を知っている人みんなに聞いてみて下さい。あなた自身はまずどう思いますか?いいえ、もうこの人は駄目です。ドガは自分の才能に見合った大きな役をもはや果たしてはいません。彼自身は決して認めないでしょうが、ドガは社会全体に恨みを抱いているのです。
ーードガは、モネとルノワールが規則を破り、他に誰か入れる必要があったから、ラファエリたちを入れたかったと主張しました。でも彼は、モネやルノワール、そしてシスレーさえもが脱退するずっと以前のすでに三年も前から、ラファエリを入れたがっていたのです。ドガは、私たちは一緒にやるべきであり、お互いに当てにし合えると主張しています(もちろん!)。で、誰を連れてきたと思います?ルピック、ルグロ、モロー・・・・・・(しかも彼はルピックとルグロの脱会については怒っていませんでした。だいいちルピックなんて、まったく冗談じゃありません。何の才能もないじゃありませんか。ドガは彼のことは何でも許しているのです。でも、シスレー、モネ、ルノワールについては決して許さないでしょうね。というのは、彼らには才能があるからに違いないのです。ドガは一八七八年には、ザンドメネギ、ブラックモン夫妻を、一八七九年にはラファエリらを連れてきました。写実主義をもたらした戦闘隊じゃありませんか!!!)
ーールノワール、モネ、シスレー、セザンヌを許さないといえる権利のある人がこの世にいるとしたなら、それはあなたです。なぜなら、あなたは彼らと同じ生活の困窮を経験していますから。しかも、それでくじけたりしませんでした。でもあなたは実際にはドガより謙虚ですし、ずっと正当です・・・・・・あなたもおわかりのように、これらすべてにおける理由は唯一、生活のための必要性なんです。誰だってお金が必要となれば、できる限りなんとかその場を切り抜けようとしますよ。ドガはこのような根本的な理由の正当性を否定しますが、私はとても重要だと思います。彼はほとんどもう、被害妄想なのです。ルノワールがマキャヴェリのような考えの持ち主だと人々に信じこませたいと思っているわけでもないでしょうに。まったくドガは正当でないばかりか、寛大でもありません。私には、こんな理由のために誰かをとがめる権利などありません。繰り返していいますが、唯一、私の知る限りその権利があるのはあなたです。あなただけ、といえます。ドガはすでにこれまで、ずいぶんいろいろな人々をその才能を認めながらも非難してきていますが、そんな権利はドガにはないはずですよ。ドガがマネ、モネ、そしてあなたに対していったことで、一冊の本ができてしまうほどです・・・・・・。
ーーあなたにお伺いしますが、私たちの義務は、私たちの仲を壊すのではなく、お互いに支え合い、お互いの弱点を許し合うことではないでしょうか。おまけに、よく話し、いろいろやりたい人間が、個人的にはいつも貢献していない人物だなんて・・・・・私はとても落胆しています。もし議題がたった一つの問題にしぼられていあならば、つまり芸術の問題についてだけでしたら、私たちは常に合意できたと思います。問題を他のレベルのものへ転換したのはドガであって、彼の愚かさのために私たちが苦しむのはとてもばかげています。ドガはすばらしい才能の持ち主なのは確かです。私は、彼の大ファンとなった最初の人間でしたから。でも、もう、この辺で終わりにします。ドガは、ルノワールやモネについて話していたとき、こんなふうにいいました。『あなたはあんな人たちを自分のところに呼ぶつもりなのですか?』と。彼はこれほどの人間になってしまったのです。もうおわかりでしょうが、偉大な才能を持っていても、すばらしい性格は持ち合わせていません。
ーー結論に入りますが、本当の意味で芸術的な展覧会をしたいとは思いませんか?この一年のうちに、私たちに何ができるかわかりません。まずは、この二ヶ月のうちに何ができるか様子を見てみませんか。もしドガが参加したいというなら、入れても構いませんが、ただし彼が連れてくるその他の人々
は抜きにしてです。彼の友人のなかで権利があるのは、ルアールとティロのみです。・・・・・・
以下の本より引用
書籍名 / title:印象派の歴史 The History of Impressionism
著者 / author:ジョン・リウォルド(John Rewald)
出版 / publisher:角川書店(2004年)
言語 / language:日本語 / Japanese