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シカゴ美術研究所の修復がカイユボットの見方を変えるかもしれない

ウォール・ストリート・ジャーナルの4/15の記事に
カイユボットの『パリの通り、雨』についての面白い記事が出ていました。
Chicago Restoration May Alter View of Caillebotte >>
日本語訳はこの記事の下にのせています。

シカゴ美術研究所が調査、修復したところ、この作品の「真の色」が現れたとのこと!
この作品は、今我々が考えているよりももっと印象派、そしてカイユボット自身にとっても重要な作品なのかもしれない。

かいつまんで言うと
・前回の修復者が空を塗りつぶしてしまったが、実際の空の色はもっと複雑な色調をしていた。
・この場面は“雨が止み、太陽が雲間から光差す一瞬”なのかもしれない。
・だとしたら一瞬を捉えるという意味で、この絵は非常に印象主義的作品だ。
・この発見はこの絵の評価、そしてカイユボット自身の評価をも変えてしまう可能性がある。



↓修復前




↓修正後

※修正後の画像がちょっと画像が暗いのは、動画からキャプチャしたためかと思います。

傘と建物の付近の方が若干色が暗くなり、トーンの違いがはっきりしたのがおわかりでしょうか?
この違いが“雨が止み、太陽が雲間から光差す一瞬”を表現しているのかも?!

おぉ。なんだか心がときめきます!!
部分ではわかりにくいですが、是非リンク先の記事に載っている比較画像を見てみてください。
黄色っぽさが抜けて、より作品の奥行感が出てきた気もします。

特に“一瞬”という点ではクロード・モネの『印象・日の出』を思い出しますね。



今まで「『パリの通り、雨』はなぜ雨を描いていないのかしら?」と思っていたのですが
これがさーっと降った雨が止んだまさにその瞬間だった、と考えるとなんだか納得がいきます。
今だったらそのくらいの雨の場合、ヨーロッパの人は傘なんか差さなさそうですけど。

カイユボットがこの作品をすごく「広がり」のあるものとして描いたと感じていたのですが、
雨が上がった瞬間だと考えると、その「広がり」ともリンクしていそう。
これは斬新な作品だわい! >>
本当はどういうつもりだったのかカイユボットにしかわからないですけどね。
ゴッホみたいに自分の作品についてカイユボットが色々と述べているような手紙でも見つからないかなぁ!



画像だと修正前なのか後なのかわかりにくいのが難・・・。
実際はもっとブルーっぽさがあるのでしょうね。
この修復作業を終えてシカゴ美術研究所は『パリの通り、雨』の展示を開始したそうです。
これは実際にこの目で見てみるしかない?!

いつかシカゴにこの作品を見に行きたいなぁ!
できれば修復前の色合いも見ておきたかった!


cai_top.jpg

シカゴ美術研究所サイトの現在のTOPページもいい感じ!
こんなに大きな作品なんですねぇ。
カイユボットもこういう感じで細かい絵筆を持って作品を描いたのかもしれないですね。


修正に関する細かいところは動画とウォール・ストリート・ジャーナルの記事をご覧下さい。
ウォール・ストリート・ジャーナルの記事はビフォー・アフターがスライドで確認できて面白いですよ!






以下ウォール・ストリート・ジャーナルの訳です。
致命的な間違いがありましたらどうぞご指摘ください。

シカゴ美術研究所の修復がカイユボットの見方を変えるかもしれない
『パリの通り、雨』
昨年10月、シカゴ美術館修復士のファエ・ルーベルはカイユボットの『パリの通り、雨』を修復し始めた。はじめはいつものクリーンアップ作業だろうと考えていた。
しかし彼女のその発見はこの名作への認識だけでなく、美術史におけるカイユボットの立ち位置までも大きく変えてしまいそうである。シカゴ美術研究所は4/23にこの作品を公開する予定である。

紫外線撮影やその他の検査によって、ルーベル修復士は前回の修復作業時に加えられた空の層を見分けることが出来た。その時の修復は空をどんより、のっぺりとしたものにしてしまっていた。ひとたびその古く黄色くなったニスが取り去られると、作品には空気感が現れ、青みを帯びた人物たちはよりコントラストがはっきりし、深みと優れた光が増した。その結果をうけて学芸員は今、カイユボットを伝統的なリアリズムの画家というよりも、真の印象派画家として捉えられるべきだと考えている。

シカゴ美術研究所の19世紀ヨーロッパ絵画・彫刻の専門家であるグロリア・グルームは述べる。
「この結果は我々が気がつかなかったものを理解する助けになっています。カイユボットは“一瞬への興味”という言葉の面では、本当の意味での印象主義者でした。」
カイユボットはサン・ラザール駅にほど近いこのにぎやかな通りを、“単なる雨の日”として描いてはいない。そうではなく、カイユボットは雨が止み、雲間から光が差そうとしている一瞬を念頭に置いているのだ。それは印象派の特徴であった特異性のひとつであった。

ルーベル修復士は『パリの通り、雨』の色調が変わったことについてこう述べる。
「皆驚きました。誰も予想していなかったことでした。皆この黄色い色は“カイユボットが意図した雨の日の雰囲気の色なのだ”と長い間思っていました。」

同様に不明瞭だった詳細にも注目が。例えば中央の女性が着けているイヤリングはそれまで真珠だと考えられていたが、今、光輝くその様子はそれが実はダイヤモンドであったということを指し示している。

カイユボットは主要な印象派画家の友人であり、彼のコレクションは歴史的な事件によって今オルセー美術館の主要コレクションとなっているが、彼自身は1970年代まで画家として高く評価されていなかった。それが変わり始めたのは、ヒューストン美術館が回顧展を開催した1976年以降のことだ。1894年にカイユボットが死亡してから初めての最も大々的な回顧展であった。その後多くの美術館がカイユボット作品を所蔵することで、カイユボットの名声は着実に上がってきている。

これらの発見が非常に重要であるため、グルーム学芸員はアメリカ中の学芸員や修復士、美術史家を4/22にシカゴに集め調査結果報告会を開催したいとしている。
ワシントンナショナルギャラリーの上級修復士アン・オエニスワルドは「まだ解決すべき疑問点はたくさんあるけど、作品を見るのが待ちきれない。私はカイユボットへの見方は変わると思うわ。」と言う。

紫外線撮影を行うことで修復は大きな進展を遂げた。X線や赤外線では損傷が見つからなかったにもかかわらず、紫外線写真では空の部分に不可解な塗りがあることを示したのだ。パリのマルモッタン美術館にある『パリの通り、雨』の習作の考察も含め検査や調査を行い、ルーベル修復士はカイユボットは、前回の修復でそうなってしまったように、空を全て同じ色で塗るつもりはなかったのだと結論づけた。

上に塗った部分を取り除くと、より鮮やかで複雑な空が現れた。建物付近の煙か汚染物質を描いたと思われる暗めの黄色に始まり、上に行くに従ってクリーム色、灰色に変わっている。
「最期にこの作品を修復した人物がそれを損傷か変色だと誤解して塗りつぶしたのだと思います。わずかに暗い部分を塗りつぶして、残りの空の色と合わせたのでしょう。」とルーベル修復士は言う。

『パリの通り、雨』は4/23に印象派コーナーに通常展示される。そして5/7には再び周囲の壁の修繕のため外される予定だ。

7×9フィートのこの作品が装いを新たにしたことはとりわけ意味のあることだ。なぜなら『パリの通り、雨』はシカゴ美術研究所でトップ10に入る人気作品であり、グルーム学芸員はカイユボットの作品の中で最も認知されていると主張する。「この絵画は到達点であり、世界に認められているのだもの。」

カイユボットのかつての低評価の理由は、なぜウォルター・クライスラーJr.(クライスラー社創業者の息子)が素晴らしいコレクションの中からこの『パリの通り、雨』を売却することにしたのかという点である程度説明ができるかもしれない。シカゴ美術研究所は1964年にニューヨークの美術商からこの作品を購入している。
『パリの通り、雨』はその時まで修復がなされていなかった。ルーベル修復士は昨年一部の表面にいくつかの傷があることに気がつき、作品をスタジオに運んだ。それらを奇麗にし、ひびを固定し、いくつかの小規模な修復をといった通常の修復作業を行うつもりだったのだ。しかしその計画は決して普通でないと判明した。

ルーベル修復士は『パリの通り、雨』の変化がいかに劇的だったかわかっている。
「美術館の中に入って絵を見ると皆驚くわよ。」

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