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ユイスマンの「近代芸術」における「室内、窓辺の女性」評

ユイスマンが1883年に出版した「近代芸術」(美術評論集)の中で
室内、窓辺の女性」について述べています。

窓辺に立つ女性は我々に背中を向けており、肘掛け椅子に座っている男性は横顔を見せ、彼女の側で新聞を読んでいる。それだけである。しかし、この絵の本当に素晴らしいところは、この率直さであり、この生活風景であるのだ。
通りを眺めているこの女性は息づいている。濃い青の見事なビロードに包まれた彼女の腰づかいは動いているように見える。もしあなたが彼女に指で触れたなら、彼女はあくびをし、振り向いて、記事にはあまり関心がないような上の空の夫と、空虚な言葉を交わすだろう。
これは現代生活の時を止めた瞬間である。この夫婦は人生によく起こる倦怠期にある。裕福な中流階級の家庭の雰囲気がインテリアから漂っている。大金持ちではなくとも好きなものを手に入れることができ、ラファイエット通りやオスマン大通りの近くに住む財界や実業家界のブルジョアジーのくつろいだ時間をカイユボットは描くのである。
この作品の手法については、単純で地味であり、ほとんど古典的と言える。踊るような筆遣いも、目を見張らせるような演出もなく、ほのめかしに満ちているということもない。しかし、いかなる欠点もないのだ。


以下の本より引用
書籍名 / title:印象派全史  1863‐今日まで 巨匠たちの素顔と作品
著者 / author:バーナード・デンバー編著 池上忠治監訳
出版 / publisher: 日本経済新聞出版社(1994年)


「近代都市生活の一コマ」というのは本当にカイユボットならではのテーマですよね。
最近こういうことについていろいろ考えてるんですけど、素人なものですからなかなか考えがまとまらなくて^^;
もっとこういう論評を読んで勉強したいと思っています。

1880年代の女性たちとクリノリン(バッスル)


化粧台の前の女

今まであまり深く考えず、この女性は単に「スカートを着よう(または脱ごう)としているところ」なんだと思っていましたが、
そうではなくて「クリノリンを付けている(または外している)ところ」なのだそうです。
※本にクリノリンと書いてあったけど正確にはその一種であるバッスルなのかも。(2010/08/08追記)

クリノリンとは女性のスカートをふくらませるための道具でした。
この作品が描かれた頃のクリノリンはかつてほど全体にふくらませず
腰の後ろを盛り上げるタイプのものになっていたようです。
クリノリンバッスル(Wikipedia)


カイユボットが描いた他の作品の女性たちを見てみましょう。


彼女たちもこれを付けているのでしょうか?
いずれにしてもこの時代は腰の後ろが盛り上がっている形のスカートが主流だったのですね。

左から
室内、窓辺の女性」1880年
坂道」1880年頃
バラ園、プティ=ジャンヌヴィリエの庭」1886年頃



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